2026年4月末、米国のダイヤモンド小売市場は母の日商戦を前に安定した動きを見せています。特に2カラット以上のラウンドブリリアントとロングファンシーシェイプへの需要が旺盛で、ハイエンド消費の底堅さが確認されています。一方、インドの製造業者は5月の夏季休暇に向けて生産を縮小しており、供給面でも変化の兆しが見られます。
米国市場:母の日需要と高額消費の持続
ラパポートが報告した4月30日付の市場コメントによれば、米国の小売市場は母の日(5月第2日曜日)を控えて安定的に推移しています。注目すべきは、2カラット以上の大粒ダイヤモンドへの需要が依然として旺盛であることです。高額消費層の支出意欲が衰えを見せず、大手卸売業者はより希少性の高い商品へのアクセスが容易なため、中小の卸売業者を上回るパフォーマンスを発揮しています。
また、デビアスの第1四半期連結売上高は前年同比25%増の6億4,800万ドルに達しました。これは1月に実施した価格引き下げが需要を効果的に刺激した結果とされています。現在、デビアスは価格を据え置く方針を維持しており、今週のサイト(原石販売会)での売上は低調と予想されています。市場参加者の視線は、5月29日から6月1日にかけてラスベガスで開催されるJCK(世界最大級の宝飾見本市)へと向き始めています。
オークション市場でも注目の取引がありました。サザビーズが香港で28.88カラット、Dカラー・フローレス(無欠点)のラウンドブリリアントを270万ドルで落札。トップグレードの大粒ダイヤモンドが依然として高い評価を受けていることを示す象徴的な結果となりました。
ファンシーシェイプ動向:ロング系が市場をリード
現在の市場でとりわけ注目されているのがファンシーシェイプ(丸型以外のカット)の動向です。オーバル、マーキーズ(マーキス)、エメラルドカットといったロング(縦長)ファンシーシェイプは、2カラット以上のカテゴリーでラウンドブリリアントを上回る人気を誇っています。
中でもマーキーズはファンシーシェイプの中で最も高値で取引される形状として位置づけられています。ロングクッションは売りやすく、スクエア(正方形)型と比較して20〜25%のプレミアムで取引されています。また、D〜IカラーおよびVS〜SIクラリティの良質なロングオーバルは米国市場で安定した需要があります。
一方で、品質の偏りが価格にも顕著に表れています。ハイクオリティなマーキーズ、ロングラディアント、ロングクッションは供給不足で入手困難な状態が続いており、プレミアムが乗っています。非常に優れたプロポーションのファンシーシェイプは希少なため、相応の上乗せ価格が求められます。逆に、プロポーションが悪いファンシーシェイプは流動性が著しく低く、買い手がつきにくい状況です。なお、プリンセスカットは現在弱含みで推移しており、市場での評価は低迷気味です。
供給面では、インドの製造業者が5月の夏季休暇(サマーリセス)に向けて生産を縮小しており、大粒・高品質ダイヤモンドを中心に供給タイト感が強まっています。生産削減が市場の下値を支える要因となっています。
日本市場への示唆
米国市場でのロングファンシーシェイプ人気は、日本市場にも波及しつつあります。オーバルカットやエメラルドカットのエンゲージメントリングは近年、日本の若い世代を中心にSNSで広く拡散され、需要が高まっています。特に指を長く細く見せる効果があるとされるロングシェイプは、日本人の美意識にもマッチしており、今後さらなる普及が期待されます。一方で、良質なファンシーシェイプの供給が世界的に逼迫していることは、日本のバイヤーや小売業者にとっても仕入れコスト上昇という形で影響を受ける可能性があります。また、デビアスの第1四半期売上が好調だったことや、JCK開催に向けた市場の盛り上がりは、2026年後半に向けてダイヤモンドの国際相場が安定または上昇へ向かう可能性を示唆しており、日本市場においても仕入れタイミングの見極めが重要になりそうです。
まとめ
2026年4月末のダイヤモンド市場は、米国小売の安定・ハイエンド消費の持続・ロングファンシーシェイプの人気上昇という三つのテーマが際立ちました。デビアスの価格維持とインドの生産縮小が供給をタイトにし、特に大粒・高品質ダイヤモンドの希少性が高まっています。サザビーズ香港での大粒Dフローレスの高値落札も、超高品質品への根強い需要を証明しています。JCK開催を目前に控えた市場は活気づいており、業界関係者は次の季節需要(母の日・夏シーズン)に向けて戦略を練っている段階です。日本の宝飾業界も、グローバルなトレンドと供給動向を注視しながら、商品構成や仕入れ方針を柔軟に見直すことが求められます。