世界的な資源大手リオ・ティントのダイヤモンド原石生産量が、今年に入って大幅に落ち込んでいる。カナダのダイアビック鉱山が閉山したことを受け、直近9カ月間の回収カラット数は110万カラットにとどまり、前年比68%減という大幅な減少を記録した。これにより、リオ・ティントはダイヤモンド事業においての主要な採掘拠点を事実上すべて手放した形となる。
ダイアビック鉱山の閉山とリオ・ティントのダイヤモンド事業の現状
カナダ・ノースウェスト準州に位置するダイアビック鉱山は、今年3月に操業寿命を全うし、正式に閉山した。これにより、リオ・ティントが保有する最後のダイヤモンド採掘資産が失われた。第3四半期(7〜9月)においては、新規の原石回収はゼロという状況だった。
ただし、完全撤退というわけではない。リオ・ティントは閉山後も鉱山内に残存するダイヤモンドの処理と販売を少なくとも2026年末まで継続する方針を示している。在庫の消化という形でダイヤモンド市場への供給は当面続くものの、新規採掘による供給は完全に止まっている。
今年に入ってからの9カ月間で、リオ・ティントの原石回収量は前年比68%減の110万カラットにまで落ち込んだ。
相次ぐダイヤモンド資産の売却・閉山
リオ・ティントのダイヤモンド事業縮小は、ダイアビック鉱山の閉山だけにとどまらない。近年、同社は以下のように段階的にダイヤモンド関連資産を手放してきた。
- 2020年:オーストラリアのアーガイル鉱山を閉山(ピンクダイヤモンドの主要産地として知られた)
- 2023年:カナダ・サスカチュワン州のフォート・ア・ラ・コーン探査プロジェクトの持分75%をスター・ダイヤモンド社に売却
- 2024年3月:ダイアビック鉱山の閉山により、ダイヤモンド採掘拠点がゼロに
こうした一連の動きは、リオ・ティントが戦略的に「脱ダイヤモンド」へ舵を切り、銅・リチウム・鉄鉱石などの金属・鉱物資源に注力していることを明確に示している。なお、アンゴラでのダイヤモンド探査活動は現在も継続中とされるが、新たな商業生産に結びつくかどうかは未知数だ。
世界のダイヤモンド供給構造が変わりつつある
リオ・ティントの撤退は、世界のダイヤモンド原石市場の供給構造に無視できない影響を与えている。かつてはデビアス、アルロサ(ALROSA)、そしてリオ・ティントの3社が世界の原石生産をほぼ寡占していた。しかし今や、リオ・ティントはその座から事実上退場した形だ。
加えて、ロシアのアルロサはウクライナ情勢に伴う国際制裁の影響を受け、西側諸国への供給が制限される局面が続いている。主要プレーヤーが相次いで供給量を落とす中、ダイヤモンド原石の長期的な供給不足が懸念される一方、合成ダイヤモンド(ラボグロウン)の台頭がその需給ギャップを埋める動きも加速している。
日本市場への示唆
日本の宝飾業界にとって、リオ・ティントのダイヤモンド事業縮小は中長期的に原石調達環境の変化として意識しておくべきトピックだ。特に、かつてアーガイル鉱山が産出していたピンクダイヤモンドはすでに希少性が急上昇しており、市場での評価額は閉山後に大きく跳ね上がっている。
ダイアビック産のダイヤモンドも、産地明示(プロビナンス)の観点から今後は希少性を増すことが予想される。透明性やサステナビリティを重視する消費者トレンドが日本でも広がりつつある中、「どの鉱山で採れたか」という情報は商品付加価値の一要素として注目されるだろう。国内のジュエラーや卸業者にとっては、仕入れ先の多様化と産地情報の把握が今後ますます重要になってくる。
まとめ
リオ・ティントのダイヤモンド生産急減は、単なる一企業の業績変動にとどまらず、世界の天然ダイヤモンド供給構造の変容を象徴する出来事だ。アーガイル閉山、各資産の売却、そしてダイアビック閉山と、同社はダイヤモンド業界から段階的に距離を置いてきた。2026年末まで残存ダイヤモンドの販売は続くものの、新規採掘による供給は完全に途絶えた。天然ダイヤモンドの希少性と産地価値が改めて問われる局面において、業界関係者はこの地殻変動を長期的な視点で捉えていく必要があるだろう。
元記事
Rio Tinto Production Plummets as Remaining Ore Depleted(Rapaport)