オーストラリアを拠点とする大手ジュエリーチェーン、マイケル・ヒルが2026年6月期の通期業績で売上高2%増を記録し、全展開市場で同店舗売上の成長を達成した。店舗数を絞り込みながら主力ブランドへ経営資源を集中させる戦略が奏功した格好だ。ここ最近の宝飾小売業界における「選択と集中」の流れを象徴する動きとして注目を集めている。
全市場で同店舗売上がプラスに——業績の概要
マイケル・ヒルは2026年6月28日を末日とする通期の売上高として、オーストラリアドル換算で6億5,470万ドル(米ドル換算で約4億5,950万ドル)を計上した。前年比2%の増収であり、同店舗ベースでも3%の成長を確保している。
売上高:AUD 6億5,470万(約459.5百万米ドル)/同店舗売上成長率:3%
地域別の内訳を見ると、成長はいずれの市場でも確認されている点が特筆される。特に後半にかけてモメンタムが加速したことが、通期の数字を押し上げた要因と分析されている。
地域別パフォーマンスの詳細
- オーストラリア:マイケル・ヒルとビービルズ(Bevilles)の両ブランドを含み、同店舗売上が前年比4.8%増。売上高はAUD 3億6,460万(約2億5,590万米ドル)を記録。
- カナダ:7%増のCAD 1億6,930万(約1億2,080万米ドル)と「過去最高」のパフォーマンスを達成。
- ニュージーランド:3.6%増のNZD 1億890万(約6,400万米ドル)。年後半に「著しい加速」が見られたと同社は説明している。
CEO(最高経営責任者)のジョナサン・ウェッカー氏は、「カナダとニュージーランドで後半に大きく加速した同店舗売上の成長は、特に心強い結果だった」とコメントしている。また、「事業を簡素化し、マイケル・ヒルとビービルズへの集中を強化するという方向性で着実に前進できた」と振り返っている。
「選択と集中」戦略——店舗網の最適化とブランド絞り込み
今期においてマイケル・ヒルは、積極的な店舗ポートフォリオの見直しを進めた。オーストラリアで4店舗、カナダとニュージーランドでそれぞれ2店舗の計8店舗を閉鎖する一方、オーストラリアとカナダで各1店舗を新規オープンした。この結果、総店舗数は281店舗となっている。
総店舗数 281店舗:オーストラリア 157店舗、カナダ 81店舗、ニュージーランド 43店舗
単なる規模拡大よりも採算性と効率性を重視するこの姿勢は、近年のグローバルな宝飾小売業界全体に共通するトレンドとも一致している。パンデミック後の消費行動の変化やオンライン購買の浸透を背景に、実店舗の「質」への転換を図る動きが各地で見られる。マイケル・ヒルもその文脈の中で、主力ブランドへの集中と不採算店舗の整理を同時に推進した格好だ。
ウェッカーCEOは「2027年度は明確な戦略と前向きな展望を持って臨む」と表明しており、次期への継続的な成長への自信をにじませている。
日本市場への示唆——「ブランド集中」と「店舗最適化」は日本でも加速するか
マイケル・ヒルの事例は、日本の宝飾小売業界が直面している課題とも深く共鳴する。国内の宝飾チェーンも、百貨店インショップの撤退や大型ショッピングモールへのシフト、さらにはEC(電子商取引)の拡大という波に対応を迫られている。こうした環境下で「どのブランドに集中するか」「どの立地から撤退するか」という意思決定の重要性は、以前にも増して高まっている。
また、マイケル・ヒルがビービルズというサブブランドを維持しながら主力ブランドとの相乗効果を狙う戦略は、日本でもマルチブランド展開を続けてきた企業にとって参考になる視点だ。闇雲に多角化するのではなく、資源を厳選した領域に集中投下することで同店舗売上という「実力値」を引き上げる——この発想は、消費の二極化が進む日本市場においても有効な処方箋となり得る。
さらに、カナダ市場が「過去最高」を記録したという点は示唆に富む。カナダは日本と同様に消費者の品質志向が強く、インフレ環境下でも確かな価値を持つ宝飾品への需要が底堅いことが確認された形だ。日本においても、価格訴求よりも「本物の価値」を訴える高品質ジュエリーの需要は引き続き期待できると見られる。
まとめ
マイケル・ヒルの今期業績は、宝飾小売における「規模より質」の戦略転換が着実な成果をもたらすことを示す好例となった。8店舗の閉鎖という構造改革を断行しながらも、全市場で同店舗売上のプラス成長を実現した点は評価に値する。主力ブランドへの集中、運営の簡素化、そして後半にかけたモメンタムの回復——この三つが重なり合い、2%増収という結果を支えた。次期2027年度に向けて、同社がどのようなさらなる成長戦略を描くのか、宝飾業界関係者の注目が集まっている。
元記事
Streamlined Focus Buoys Michael Hill Revenue(Rapaport)