ダイヤモンド市場に緩やかな回復の広がりが見られている。業界指標であるRAPIが1カラットで15カ月ぶりの上昇を記録し、小粒石でも値が戻りつつある。ファンシーシェイプにも需要の動きが出てきており、市場のセンチメントが改善に向かっているとの見方が強まっている。
市場全体の回復動向——RAPIに15カ月ぶりの上昇
業界の価格動向を示すラパポート指数(RAPI)において、1カラットが+0.5%の上昇を記録した。15カ月以上にわたって下落や横ばいが続いていた局面を考えると、この動きは小さいながらも注目に値する転換点として業界関係者の間で話題となった。
小粒・中粒の丸石(ラウンドブリリアント)においても、同様の回復傾向が見られる。0.30カラットのRAPIは+2%、0.50カラットは+2.5%と、それぞれ先行する形で価格が戻っている。一方で3カラットは-0.4%とわずかに軟調であり、粒径によって温度差があることも事実だ。
0.30カラットRAPI +2%、0.50カラット +2.5%——小粒石が市場回復をリードする構図が鮮明に。
インドでは鑑定書付き(サーティファイド)ストーンへのプレミアムが高まっており、非鑑定品との価格差が広がっている。インドの小売需要は底堅く、中東市場も活発な動きを見せている。夏季休暇から戻った各取引ハブで商談が再開し、全体的なムードが上向いてきた。ただし、ホンコンでは9月の主要展示会を前にやや慎重な様子が続いており、本格的な動きはショー後に期待される状況だ。
供給面の動向——ラフの絞り込みが市場を支える
原石(ラフダイヤモンド)の供給は引き続きタイトな状態にある。この供給制約がポリッシュドの生産量を抑えており、結果として在庫圧力の緩和につながっている面もある。大手マニュファクチャラーの一部は、この局面を好機と捉えてマーケットシェアの拡大を図る動きを見せている。
また、業界に関連する動きとして、米国がロシア産ダイヤモンドに関する猶予期間の期限を2027年9月まで延長したことが伝えられた。制裁の運用をめぐる実務的な対応が続いており、サプライチェーン全体にとって引き続き注視すべきテーマとなっている。
ファンシーシェイプ市場——「ロング系」が主役、アンティークカットも注目
ファンシーシェイプ(異形カット)市場では、ラウンドに比べて価格の回復がやや遅れていたが、この時期にかけて需要の復調が見られる場面が増えてきた。特に2カラット以上のロング系シェイプに動きが出ており、バイヤーからの引き合いが強まっている。
人気シェイプと市場の特徴をまとめると、以下の通りだ。
- マーキス(マーキーズ):現在ファンシーシェイプの中で最も高値。ハイクオリティ品は入手難の状態が続く
- オーバル:D〜Iカラー、VS〜SIクラリティのロング系オーバルが米国市場で堅調。良質な形状のものはプレミアム付きで取引
- ロングクッション:スクエアタイプに対して20〜25%のプレミアムで取引。売りやすい形状として評価が高い
- ロングラジアント・エメラルドカット:供給が少なく、良品が出ると争奪戦になりやすい状況
- プリンセスカット:長期の軟調局面から需要回復の兆しがあるが、価格水準はまだ低位
- アンティークカット・アンティークスタイル:トレンドとして「ホット」な状態が継続しており、引き続き人気を集めている
一方で、プロポーションが悪いファンシーシェイプは売れ行きが悪く、流動性に欠ける傾向が顕著だという。バイヤーの目が肥えてきており、カットクオリティへのこだわりが市場全体で高まっている。非常に精緻にカットされたファンシーシェイプは希少性から引き続きプレミアムを形成している。
日本市場への示唆——「形」と「鑑定書」がキーワードに
日本の宝飾市場においても、ファンシーシェイプへの関心はここ数年で着実に高まっている。特にオーバルやエメラルドカットは婚約指輪やファインジュエリーのデザインで採用されるケースが増えており、今回の市場動向はそのまま国内仕入れ戦略にも影響を与えうる。
また、インドで鑑定書付きストーンへのプレミアムが拡大しているという動向は、日本のエンドユーザーが鑑定書に高い信頼を置く文化とも一致する。GIAやCGLの鑑定書付き商品に対する消費者ニーズは依然として強く、非鑑定品との差別化はこれからも重要な競争軸になるだろう。
さらに、アンティークカットの人気はグローバルなトレンドと連動しており、日本でもヴィンテージ・アンティーク調ジュエリーへの関心が高まっている。ローズカットやオールドマインカットといった歴史的なカットスタイルをラインナップに加えることは、差別化戦略として検討の価値がある局面に来ている。
まとめ
ダイヤモンド市場は、長期にわたった調整局面を経て、緩やかながら回復の裾野が広がりつつある。1カラットRAPIの15カ月ぶり上昇は象徴的な出来事であり、小粒石の先行回復、ファンシーシェイプの需要復調、鑑定書付きへのプレミアム拡大など、複数のポジティブサインが重なってきた。
ただし、3カラット超の大粒石や比例の悪いファンシーシェイプには依然として慎重な目線が向けられており、市場全体が一様に強いわけではない。供給タイト・需要選別・品質重視という3つのキーワードを念頭に置きながら、引き続き市場の変化を注視していきたい。
元記事
Market Comment: September 3, 2026(Rapaport)