ダイヤモンド市場では、0.30〜1.49カラット台を中心に慎重な回復トレンドが続いている。ファンシーシェイプへの需要が高まる一方、米国市場はホリデーシーズンへの備えを加速させており、業界全体が次のフェーズへの移行期に入りつつある。
全体相場:小〜中型が牽引する段階的な回復
ダイヤモンド相場は、急激な上昇ではなく「慎重な回復」という言葉がふさわしい展開を見せている。特に0.30〜1.49カラットの帯域で価格の持ち直しが確認されており、なかでも0.50カラット帯の価格上昇ペースが0.30カラット帯を上回る場面が見られるようになってきた。
1カラット台の一部カテゴリーについても、直近の下落から反発する動きが出ている。ただし、夏季休暇の最終局面にあることから、主要トレーディングハブの取引量は全体的に落ち着いた状態が続いていた。
ラウンドとラージダイヤモンドの動向
ラウンドブリリアントは、ファンシーシェイプと比較して価格トレンドが良好な状況を維持している。大粒ダイヤモンド(ラージダイヤモンド)は安定した需要が続いており、ハイエンド市場全体も底堅い動きを示している。高価格帯セグメントの堅調さは、富裕層消費の持続を裏付けるものとして業界内で注目されている。
原石市場と業界の供給動向
供給面では、原石(ラフダイヤモンド)市場が供給削減を受けてタイト化しつつあるという情報が伝わっている。ロシアの主要ダイヤモンド産出企業であるアルロサは、スモレンスクとヤクーチアにダイヤモンド研磨クラスターを設立する計画を進めているとされる。また、カタール・ダイヤモンド取引所がシンガポール、上海、東京の各ダイヤモンド取引所と覚書(MoU)を締結するという動きもあり、中東を起点とした取引ネットワークの拡張が進んでいる。
原石市場は供給削減を受けてタイト化。アルロサの研磨クラスター設立計画や、カタール・ダイヤモンド取引所の多極的なMoU締結が業界の構造変化を示している。
ファンシーシェイプ市場:ロング系が主役、アンティークカットも注目
ファンシーシェイプ市場では、オーバル、マーキーズ(マーキス)、エメラルドカットといったロング系シェイプが2カラット以上のサイズで活発に取引される場面が見られた。特に高品質なマーキーズはファンシーシェイプの中で最も高価な形状として市場に認識されており、ロングラディアントやロングクッションも需給がタイトな状態が続いている。
ロングクッションは売りやすく、スクエアクッションに対して20〜25%のプレミアムで取引されているという報告もある。一方、長らく低迷していたプリンセスカットへの需要が回帰しつつあるという声も聞かれ始めているが、価格水準はいまだ低いままだ。
主なファンシーシェイプの市場動向まとめ
- オーバル(ロング系):D〜Iカラー、VS〜SIクラリティで米国市場の需要が堅調
- マーキーズ:ファンシーシェイプ中で最高値。高品質品は在庫不足
- ロングクッション:流動性が高く、スクエアカットに対して20〜25%のプレミアム
- プリンセスカット:長期低迷後に需要回帰の兆しも、価格は依然低水準
- アンティークカット・スタイル:トレンドとして注目が高まり、人気急上昇中
- プロポーションの悪いファンシーシェイプ:流動性が著しく低く取引困難
非常に高い品質でカットされたファンシーシェイプは希少性が高く、プレミアム価格がつく一方、プロポーションが悪いものは買い手がつきにくい二極化が進んでいる。カットクオリティへの市場の目が一層厳しくなってきたといえる。
日本市場への示唆
カタール・ダイヤモンド取引所が東京のダイヤモンド取引所とMoUを締結したという動きは、日本の業界にとって見逃せない出来事だ。国際的な取引ネットワークの中に日本が組み込まれることで、情報アクセスや原石・研磨石の調達ルートに変化が生じる可能性がある。
また、アンティークカットやロング系ファンシーシェイプの人気は、日本のブライダルジュエリー市場にも影響を及ぼしつつある。個性的なシェイプを求める消費者が増えるなか、オーバルやエメラルドカットを取り扱うバイヤーやジュエラーにとっては追い風となる流れだ。一方でプロポーション基準の厳格化は、仕入れの目利き力がより問われる時代を示唆している。
さらに、9月中旬に予定される香港ショーに向けて中国需要が動き始めれば、アジア全体の相場に影響が波及する可能性がある。日本の業者にとっても、同ショーの結果を注視することが重要だろう。
まとめ
ダイヤモンド市場は、急速な回復ではなく着実な持ち直しの段階にある。0.50カラット帯の価格上昇、ロング系ファンシーシェイプとアンティークカットへの需要集中、ハイエンド市場の底堅さという三つの軸が現在の市場を特徴づけている。原石供給のタイト化や国際的な取引ネットワークの再編も進んでおり、秋以降の市場動向を占う重要な局面を迎えているといえる。
元記事
Market Comment: August 27, 2026(Rapaport)