インドの大手ダイヤモンドメーカー「アジアン・スター」、年間売上高が2.4%減少——ジュエリー部門は17%増の明暗

ムンバイを拠点とするダイヤモンド・ジュエリーメーカー、アジアン・スター(Asian Star)が2024年度(2024年3月期)の業績を発表しました。グループ全体の売上高は前年比2.4%減となりましたが、ジュエリー部門は17%増と好調を維持しており、ダイヤモンド原石・研磨石の販売不振とジュエリー販売の成長という対照的な結果となっています。インドの宝飾業界を取り巻く市場環境の変化が如実に反映された決算といえるでしょう。

2024年度業績の詳細:ダイヤモンドが振るわず、ジュエリーが下支え

アジアン・スターが発表した2024年3月期(インド会計年度)のグループ売上高は、290億3,000万インドルピー(約3,034億円)となり、前年度比2.4%の減少となりました。部門別に見ると、明暗がはっきりと分かれています。

ダイヤモンド部門の売上高は前年比11%減の205億5,000万インドルピー(約2,146億円)と大幅に落ち込みました。世界的なダイヤモンド需要の低迷が、インドの加工・製造業者にも直撃した形です。一方、ジュエリー部門は前年比17%増の96億5,000万インドルピー(約1,008億円)と大きく伸長しました。金価格の上昇がジュエリーの販売価格を押し上げ、売上増につながったと同社は説明しています。利益面では、最終利益が前年比2.5%減の4億480万インドルピー(約4億2,000万円)となりました。

第4四半期(2024年1月〜3月)の動向

第4四半期単体で見ると、ダイヤモンド部門の売上高は前年同期比28%減の47億9,000万インドルピー(約500億円)と急落しました。ただし、前四半期(第3四半期)比では1%増となっており、底打ちの兆しも見られます。四半期全体の売上高は前年同期比12%減の74億8,000万インドルピー(約782億円)。一方、純損失は前年同期の6,130万インドルピー(約6億4,000万円)から410万インドルピー(約4,300万円)へと大幅に縮小しており、採算性の改善が進んでいることが読み取れます。

背景にある世界的なダイヤモンド市場の低迷

アジアン・スターの業績悪化は、同社固有の問題というよりも、業界全体が直面する構造的な課題を反映したものと見るべきでしょう。2022年後半から続くダイヤモンド価格の下落と需要の減退は、インドのスーラット(Surat)やムンバイを中心とする研磨・製造業者に大きなダメージを与えてきました。

主な要因として挙げられるのは、中国の消費回復の鈍さ、米国市場における婚約指輪需要の伸び悩み、そしてラボグロウンダイヤモンド(人工ダイヤモンド)の急速な普及による天然ダイヤモンドへの需要シフトです。特にラボグロウンダイヤモンドは、価格競争力において天然石を大きく上回るため、ミッドレンジ市場での代替が進んでいます。こうした環境の中、アジアン・スターがジュエリー部門への注力で収益源を多角化しつつある姿勢は、業界全体のトレンドとも一致しています。金価格の高騰はジュエリー単価を押し上げる反面、消費者の購買意欲を抑制するリスクもあり、今後の動向が注目されます。

日本市場への示唆

アジアン・スターの業績は、日本の宝石・ジュエリー業界にとっても他人事ではありません。日本の小売店や卸業者の多くは、インドの研磨業者から天然ダイヤモンドを調達しています。インドの製造業者の業績悪化は、供給価格や在庫状況に影響を及ぼす可能性があります。一方で、金価格の高騰による地金ジュエリーの高付加価値化は、日本市場でも同様に観察されており、ゴールドジュエリーへの消費者関心が高まっています。また、ラボグロウンダイヤモンドの普及については、日本市場でも認知度が徐々に上がってきており、天然ダイヤモンドとの差別化戦略がより重要になってくるでしょう。産地証明や希少性、職人技といった付加価値を訴求することが、日本の宝飾業界が今後取り組むべき課題の一つと言えます。

まとめ

インドの大手ダイヤモンド・ジュエリーメーカー、アジアン・スターの2024年3月期決算は、ダイヤモンド部門11%減・ジュエリー部門17%増という対照的な結果となりました。世界的なダイヤモンド需要低迷の影響を受けつつも、ジュエリー事業の成長と損失縮小によって業績の底割れを防いでいます。天然ダイヤモンドを取り巻く市場環境は依然として厳しいものの、第4四半期の前四半期比での微増は回復への小さな一歩かもしれません。今後、グローバルなダイヤモンド需要の回復タイミングと、ラボグロウンダイヤモンドへの対応戦略が、インドの製造業者にとって最大の焦点となるでしょう。