アフリカ南部の産油国アンゴラが、2025年のダイヤモンド原石生産において好調な結果を記録しました。当初の予測を上回る1,520万カラットを達成し、世界的な需要低迷や合成ダイヤモンドの台頭という逆風の中でも、その存在感を示しています。輸出量も前年比70%増と大幅に拡大しており、国際ダイヤモンド市場におけるアンゴラの地位が着実に強化されています。
2025年の生産・輸出実績:当初予測を超える好結果
アンゴラの鉱物資源担当国務長官ジャニオ・ビクトル氏によると、2025年の国内ダイヤモン鉱山の総生産量は1,520万カラットに達し、前年比8%増を記録しました。注目すべきは、この数字が政府の当初予測(1,510万カラット)を超えただけでなく、年途中に下方修正された予測(1,480万カラット)をも大幅に上回った点です。鉱業省(MIREMPET)はこの成果をFacebook公式ページで発表し、業界内外から広く注目を集めました。
輸出面では、2025年を通じて1,700万カラット以上の原石が海外に出荷され、総輸出額は16億ドル(約2,400億円)に上りました。輸出量は前年比70%増という驚異的な伸びを示しており、量的拡大が著しいことがわかります。一方、輸出額の増加率は7%にとどまっており、単価の低下傾向が続いていることも事実として見逃せません。
輸出先の内訳を見ると、アラブ首長国連邦(UAE)が79%を占め、圧倒的なシェアを誇っています。次いでベルギーが20%と続き、この2カ国だけでほぼ全量を吸収している構図です。UAEのドバイは近年、世界の原石取引の主要ハブとして急成長しており、アンゴラとの関係強化もその流れを反映したものといえます。
逆風下での成長——合成ダイヤモンドと需要低迷への対応
今回の生産増は、ダイヤモンド業界全体が厳しい環境に置かれている中での達成という点で、特に意義深いものがあります。ビクトル長官が指摘するように、現在の国際市場では主に2つの構造的課題が業界の足を引っ張っています。
一つ目は、天然ダイヤモンドに対する需要の低迷です。コロナ禍後の需要回復が一巡し、中国市場の消費低迷や世界的なインフレによる消費意欲の減退が続いており、ブランドジュエリー需要も伸び悩んでいます。二つ目は、合成ダイヤモンド(ラボグロウンダイヤモンド)の急速な普及です。技術の進歩によってコストが大幅に下落したラボグロウン製品が中低価格帯の市場を席巻しており、天然原石の価格圧力となっています。
こうした環境の中でアンゴラが生産量を伸ばせた背景には、大手鉱山会社デ・ビアスとの合弁事業「ルカパ」や、ロシア系資本との協力体制など、複数の鉱山開発プロジェクトが並行して稼働していることが挙げられます。また、政府が外国資本の参入を積極的に促進してきた政策の成果が、ここへきて生産量の拡大として表れていると見ることができます。
2026年の見通し——供給コントロールと選別的需要に期待
ビクトル長官は2026年の見通しについて、「業界は徐々に安定化に向かうだろう」と慎重ながらも前向きな見解を示しました。具体的には、より厳格な供給管理と、品質・価値を重視した選別的な需要が業界を下支えするとの見方を示しています。ただし、世界経済の動向や地政学的リスクなど外部要因の影響は引き続き受けるとも認めており、楽観的な見通し一辺倒ではありません。
産出量の拡大と輸出額の伸び率の乖離が示すように、単純に量を増やすだけでは収益の最大化にはつながらないという現実もあります。今後は採掘コストの効率化とともに、高品質の原石の選別・付加価値化が、アンゴラのダイヤモンド産業にとってより重要な課題となってくるでしょう。
日本市場への示唆——天然ダイヤモンドの価値再定義が鍵に
アンゴラの生産増加は、日本の宝石業界にとっても無関係ではありません。原石供給量の増加は中長期的に天然ダイヤモンドの価格に下押し圧力をかける可能性があり、仕入れコストや製品価格の戦略的な見直しを迫られる場面が出てくるかもしれません。一方で、合成ダイヤモンドとの差別化という観点からは、採掘履歴や産地の透明性を訴求する「天然ダイヤモンドのストーリー」への関心が高まる機会ともなり得ます。アンゴラ産のダイヤモンドは、近年「紛争フリー」な産地として国際的な評価も高まっており、倫理的消費を重視する日本の若い消費者層にアピールできる素材としての可能性も秘めています。
まとめ
アンゴラは2025年、ダイヤモンド原石生産量1,520万カラットを達成し、当初予測を上回る8%増という好結果を収めました。輸出量は前年比70%増と急拡大している一方、輸出額の伸びは7%にとどまっており、価格環境の厳しさも同時に浮き彫りとなっています。合成ダイヤモンドの台頭や世界的な需要低迷という構造的課題が続く中、アンゴラ政府は2026年に向けて供給管理の強化と選別的需要の活性化に期待を寄せています。天然ダイヤモンドの価値をどう再定義し、消費者に届けるかが、産出国・流通業者・小売業者それぞれに問われる時代が続きそうです。