2026年7月のダイヤモンド市場動向|小粒石の回復とファンシーシェイプの需要拡大

2026年7月のダイヤモンド市場では、小粒石の価格回復や1カラット台のコマーシャルグレードの改善が話題となる一方、夏季の取引閑散期に入りつつあるという複合的な動きが見られた。ファンシーシェイプでは、オーバルやマーキーズなどロング系のカットが堅調な需要を集めており、特にマーキーズが最も高値で取引される形状として注目されている。デビアスの売却交渉やアメリカの新たな関税措置など、業界構造に影響しうる動きも重なった時期だった。

ダイヤモンド相場:小粒石の回復と季節的な閑散感が混在

この時期の市場でまず目を引いたのは、0.30〜0.69カラットのラウンドブリリアントにおける価格の持ち直しだ。1カラットのコマーシャルグレード(流通量の多い中品質帯)についても、ディーラーからは改善の声が聞かれており、底打ち感が徐々に広がってきている。

一方で、ニューヨークやアントワープなどの主要取引ハブでは夏季の減速が見られ、アメリカの卸売り市場も季節的な落ち着きの中で「steady(横ばい安定)」という評価にとどまった。強くはないが崩れてもいない、という慎重な均衡状態が続いていた。

デビアス売却交渉と業界への影響

業界全体を揺るがす動きとして、アングロ・アメリカンがデビアスの売却先として、ギャレス・ペニー氏率いるコンソーシアムを有力候補に選定したとされる報道が注目を集めた。デビアスは2026年上半期において大幅な損失が見込まれており、第2四半期の売上高は前年同期比44%減の6億6500万ドルという厳しい数字が伝えられている。

デビアスの2026年第2四半期売上高は前年同期比44%減の6億6500万ドル(約1000億円相当)と報じられており、ダイヤモンド原石市場の低迷を象徴する数字となっている。

また、ボツワナのオカバンゴ・ダイヤモンド・カンパニーのオークションでは、小粒・低品質のラフダイヤモンドの価格が上昇しており、原石市場における一部のセグメントに底打ち感が出てきていることを示している。さらにアメリカがブラジル産品に25%、カナダ産品に50%の追加関税を課す措置を発動しており、ダイヤモンドや宝石業界への影響は現時点では不透明な状況だ。

ファンシーシェイプ市場:ロング系カットが主役に

ラウンドブリリアントが依然として市場の基軸である一方、2カラット以上のファンシーシェイプ(異形カット)においては、ロング系の形状が際立った強さを見せていた。特に以下のカット形状が注目されている:

  • マーキーズ(Marquise):ファンシーシェイプの中で最も高値で取引され、かつ供給が逼迫している
  • ロングラディアント(Long Radiant):高品質なものが市場から少なくなりつつある
  • ロングクッション(Long Cushion):売りやすく、スクエアクッションに対して20〜25%のプレミアムで取引されている
  • オーバル(Oval):アメリカ市場ではD〜IカラーのVS〜SIクラリティで良形状のものが堅調
  • アンティークカット(Antique Cuts):トレンドとして人気が高まっており「ホット」と評される

反対に、プロポーションの悪いファンシーシェイプは売れ行きが鈍く、換金性が著しく低いとされている。市場では「非常によくカットされたファンシーシェイプ」が希少なためにプレミアムがつく場面も多く、カットクオリティへの評価が一段と厳しくなっている。

ロングクッションはスクエアクッションに対して20〜25%のプレミアムで取引されており、同じクッションカットでも縦横比によって大きく価値が変わる時代となっている。

日本市場への示唆:形状トレンドとマーケット戦略を見直す時機

日本の宝飾市場においても、グローバルなトレンドは確実に影響を及ぼしている。ここ数年、婚約指輪市場ではラウンドブリリアントの絶対的な優位が続いてきたが、ファンシーシェイプへの関心は若い世代を中心に着実に高まっている。オーバルやマーキーズといった「縦長に指を美しく見せる」形状は、SNSを通じて認知が広がっており、今後の商品ラインナップや接客提案に反映させる余地は十分にある。

また、デビアスの経営状況やアメリカの関税動向は、ラフダイヤモンドのサプライチェーンに直結する問題だ。日本の宝飾企業にとっても、原石調達コストや研磨石の仕入れ価格への間接的な影響を注視しておく必要があるだろう。さらに、スウォッチグループの上半期宝飾・時計売上が前年比2%増の36億ドルを記録したことや、香港の周生生(チョウ・サン・サン)や六福(ルック・フック)が4〜6月期に売上成長を報告したことは、アジアの宝飾市場が底堅い需要を維持していることを示している。日本市場においても、インバウンド需要の回復を追い風に、高品質なジュエリーへの需要が引き続き期待できる。

まとめ

2026年7月のダイヤモンド市場は、小粒石・コマーシャルグレードの価格回復という明るい兆しがある一方、デビアスの経営問題や関税リスクという構造的な課題も抱える、複雑な局面にある。ファンシーシェイプ市場ではロング系カットが主役の座を確立しつつあり、特にマーキーズ・ロングクッション・オーバルが需要と希少性の両面から注目されている。日本市場においても、これらのトレンドを踏まえた商品提案や在庫戦略の見直しが、競合との差別化につながる可能性がある。インド市場がIIJS(8月開催の国際宝飾展)に向けて楽観的な見方を示していることも、業界全体の回復ムードを後押しする要因の一つと言えるだろう。

元記事

Market Comment: July 23, 2026(Rapaport)