世界のダイヤモンド市場は総じて安定した推移を見せながらも、カテゴリーごとに明暗が分かれる局面を迎えている。デビアスが一部ラフダイヤモンドの価格を大幅に引き下げた一方、ファンシーシェイプへの需要は根強く、特にロングシェイプと呼ばれる細長い形状のストーンが市場で高い評価を受けている。
ラウンドダイヤモンド市場:静かな回復の兆し
米国市場では7月4日の独立記念日を含む連休明けとともに夏季のホリデーシーズンが本格化し、卸売取引は全体的に閑散とした動きを見せていた。こうした季節的な要因もあり、ラウンドカットの価格は総じて横ばいで推移している。
ただし、すべてが停滞していたわけではない。1〜1.99カラットのF〜Jカラー、VS〜SIクラリティに該当するラウンドダイヤモンドでは、需要回復の初期兆候が見え始めているという。供給が引き締まった特定のカテゴリーでは価格が小幅に強含む動きも報告されており、市場の底打ち感が徐々に意識されつつある段階だ。
デビアスによるラフ価格の大幅引き下げ
業界で大きな注目を集めたのが、デビアスによるサイト(ラフダイヤモンドの定期販売会)における価格の大幅引き下げだ。特に0.75カラット未満、いわゆる「3グレイナー」と呼ばれる小粒ダイヤモンドを中心に、市場実勢に合わせた価格調整が行われた。
デビアスはサイトホルダーリストをこれまでの約70社から45〜50社へと大幅に絞り込み、新契約のもとでの初回販売を実施した。
サイトホルダー(デビアスからラフダイヤを直接購入できる選定業者)の数を削減するこの動きは、供給管理を強化し、流通品質を高めようとする意図が背景にあるとみられる。市場への影響は今後の取引を通じて徐々に明らかになっていくだろう。
ファンシーシェイプの強さ:ロングシェイプが主役に
ラウンドが慎重な動きを続ける一方で、ファンシーシェイプ(ラウンド以外の形状)ダイヤモンドは特に2カラット以上の大粒サイズで、ラウンドを上回るパフォーマンスを示していた。なかでも細長いシェイプが市場から高い評価を受けている。
- オーバル:良質なシェイプのD〜Iカラー、VS〜SI品が米国市場で堅調に取引
- マーキース:ファンシーシェイプの中で最も高値がつく形状として認識されており、高品質品は特に入手困難
- エメラルドカット:ロングシェイプとして需要が拡大傾向
- ロングクッション:スクエアクッションと比べて20〜25%のプレミアムで取引されており、売りやすいシェイプとして評価が高い
- アンティークカット・クラシックスタイル:トレンドとして注目を集めており、需要が活発
一方で、プロポーションの悪いファンシーシェイプは流動性が著しく低く、買い手がつきにくい状況が続いている。非常に精度の高いカットが施されたファンシーシェイプは入手困難で、プレミアムが付く傾向も見られた。市場はシェイプだけでなく、カットクオリティに対しても一段と厳しい目を向けるようになっている。
インドの宝飾品市場も堅調:タイタンが39%増を記録
インド大手の宝飾品企業タイタンは、第1四半期の宝飾品売上が前年同期比39%増という力強い成長を達成した。なかでもダイヤモンドなどの石付き(スタッズド)ジュエリーは30%台半ばの成長を見せており、インド国内の宝飾品消費意欲の高さが改めて示された形だ。
日本市場への示唆
今回の市場動向は、日本の宝飾業界にとっても複数の重要な示唆を含んでいる。まず、デビアスによるラフ価格の引き下げは、中長期的には研磨ダイヤモンドの仕入れコストにも影響を与える可能性がある。特に小粒ダイヤモンドを多用するメレ品やパヴェセッティングに使用される石材の価格変動は、国内ジュエラーにとっても注視すべき動きだ。
ファンシーシェイプの需要増加という世界的なトレンドは、日本市場にも着実に浸透しつつある。オーバルやマーキース、エメラルドカットを好むエンゲージメントリング顧客の増加は国内でも観察されており、米国市場のトレンドが数シーズンを経て日本でも広がりを見せている。ロングシェイプのダイヤモンドを商材として積極的に取り扱う動きは、先進的なジュエラーにとっての差別化要因になり得るだろう。
また、アンティークカットやクラシックスタイルの人気は、日本のアンティークジュエリーファンや着物文化と親和性のある意匠への関心とも重なる部分がある。こうした歴史的なカットスタイルに対する再評価の波を、商品ラインナップや情報発信に活かす余地は大きいと言えるだろう。
まとめ
世界のダイヤモンド市場は、米国の夏季休暇シーズン到来による一時的な閑散期を迎えながらも、特定カテゴリーでの底打ちと需要回復の兆しが見られる段階にある。デビアスによるラフ価格引き下げとサイトホルダーの絞り込みは、供給側の大きな構造変化を示すものであり、今後の市場価格形成に影響を与えていく可能性が高い。ファンシーシェイプ、なかでもロングシェイプとアンティークカットの強さは継続しており、高品質・高プロポーションの石材への需要が一段と明確になっている。日本の宝飾業界にとっても、こうした世界的なトレンドを踏まえた商品戦略の見直しが求められる局面だ。
元記事
Market Comment: July 9, 2026(Rapaport)