GIA(米国宝石学会)が2027年、マーキス・オーバル・ペアシェイプのファンシーシェイプダイヤモンドにカットグレードを導入する方針を明らかにした。長年にわたり業界が求めてきた変化であり、消費者保護の観点からも大きな意味を持つ動きとして注目を集めている。また、蛍光性(フルオレッセンス)に関する新たなコメント記載も予定されており、グレーディング報告書のあり方が大きく変わろうとしている。
ファンシーシェイプへのカットグレード拡張——業界の長年の要望がついに実現へ
これまでGIAのグレーディングレポートでカットグレードが付与されていたのは、ラウンドブリリアントカットのみだった。ラウンドブリリアントは「トリプルEx(カット・研磨・対称性すべてエクセレント)」という評価が可能だったのに対し、その他のファンシーシェイプはポリッシュ(研磨)とシンメトリー(対称性)のスコアのみに留まっていた。
ところがファンシーシェイプのカット品質には実際に大きなばらつきがあり、同じシェイプでも仕上がりによって輝きや美しさに差が生じる。業界からは「カット品質が評価されないまま流通している」という声が数年前から上がっており、GIAへの改善要望は根強いものがあった。
GIAは2006年にラウンドブリリアントのカットグレードシステムを導入して以来、ファンシーシェイプへの拡張を研究し続けてきたという。今回の発表はその長期的取り組みの成果であり、まずはマーキス、オーバル、ペアシェイプの3形状から開始し、詳細は2027年初頭に改めて公表される予定とされている。
ファンシーシェイプの需要拡大が背景に
今回の動きの背景には、ファンシーシェイプダイヤモンドの需要が近年顕著に拡大しているという市場環境がある。GIAが2022年に受け付けたグレーディング依頼のうち、約3分の1がファンシーシェイプだったとされており、以前の10年間の平均(4分の1未満)から大幅に増加している。婚約指輪市場でのオーバルやペアシェイプの人気上昇が、この傾向を強く後押ししている。
GIAが2022年に受け付けたグレーディング依頼の約3分の1がファンシーシェイプであり、過去10年間の平均(4分の1未満)から大幅に増加している。
フルオレッセンスへの新たなコメント記載——2026年第4四半期から導入予定
カットグレードの拡張と並んで注目されているのが、フルオレッセンス(蛍光性)に関する新しいコメントの追加だ。GIAは2026年第4四半期より、天然ダイヤモンド(DからZカラーグレード)の標準グレーディングレポートおよびドシエレポートに、フルオレッセンスの影響を説明するコメントを記載する方針を示している。
追加されるコメントは主に2種類が検討されており、それぞれ異なる状況に対応するものとなっている。
- 蛍光性が自然光など紫外線(UV)が豊富な環境でダイヤモンドの外観を向上させる可能性があることを示すコメント
- UV光下において、透明度の低下やヘイジーネス(もやがかかった見え方)、ミルキーネスといった既存の特性が目立ちやすくなる場合があることを示すコメント(対象はDからZの天然ダイヤモンドの0.2%未満と推定)
GIAの調査によれば、フルオレッセンスは一般的に外観への影響が中立から好影響であり、日光相当の環境下でダイヤモンドをより明るく見せる場合もあるとされている。フルオレッセンスに関するコメントが記載される対象は、GIAが受け付けるDからZの天然ダイヤモンドのうち約10%と見込まれている。
フルオレッセンスが外観に悪影響を与える特別なコメントが記載されるのは、天然DからZダイヤモンド全体の0.2%未満にとどまる見込み。
なお、今回のコメントはフルオレッセンスがカラーグレードに与える影響については言及しないとGIAは明言している。フルオレッセンスが低カラーダイヤモンドをより無色に見せたり、高カラーダイヤモンドにヘイジーな印象を与えたりする可能性はこれまでも議論されてきたが、コメントの対象範囲はあくまで外観への視覚的な影響に絞られる。
日本市場への示唆
日本の宝石・ジュエリー市場においても、これらの変更は無視できない影響をもたらすと考えられる。ファンシーシェイプダイヤモンドは近年、婚約指輪や高級ジュエリーの分野で人気が高まっており、オーバルカットやマーキスカットを採用したデザインは国内でも一定の支持を集めている。
カットグレードの導入により、これまで曖昧だったファンシーシェイプの品質評価が明確化される。消費者がGIAレポートを確認する際の判断基準が増えることは、購入時の安心感につながる一方、販売側にとっては商品説明の充実や在庫の品質管理がより重要になるだろう。
フルオレッセンスのコメント追加については、業界内での価格形成にも影響が及ぶ可能性がある。これまでフルオレッセンスの強いダイヤモンドはトレードで割引される傾向があったが、GIAが「中立から好影響」という研究結果を明示することで、こうした慣行が見直されるきっかけになるかもしれない。日本の小売業者やバイヤーも、この変化を踏まえた仕入れ・販売戦略の再考が求められる場面が出てくるだろう。
まとめ
GIAによるファンシーシェイプへのカットグレード拡張と、フルオレッセンスコメントの追加は、いずれもダイヤモンドグレーディングの精度と透明性を高めるための重要な取り組みだ。2006年のラウンドブリリアントへのカットグレード導入から約20年を経て、業界が長く待ち望んでいた変化がいよいよ現実のものとなりつつある。マーキス・オーバル・ペアシェイプから始まるカットグレードの導入は、将来的にさらなるシェイプへの拡張も期待させるものであり、グレーディングレポートの役割そのものが新たなフェーズに入ったといえる。日本市場の関係者にとっても、この動向を早期に把握し、対応を準備しておくことが重要になってくるだろう。
元記事
GIA to Launch Cut Grade for Select Fancy Shapes in 2027(Rapaport)