天然ダイヤとラボグロウンダイヤは「共存共栄」——米国大手宝飾サプライヤーが語る市場の現状

天然ダイヤモンドとラボグロウン(合成)ダイヤモンドは、互いに市場を奪い合うのではなく、ダイヤモンド全体のパイを拡大させているという見方が、米国の宝飾業界大手から示されました。ルイジアナ州ラファイエットを拠点とする宝飾サプライヤー・スタラー(Stuller)のCEO、ダニー・クラーク氏と社長のベリット・マイヤーズ氏が、ラパポート・ダイヤモンド・ポッドキャストに出演し、最新の市場動向と自社の戦略を語っています。両社の見解は、日本の宝飾業界にとっても示唆に富む内容です。

「パイが大きくなっている」——共存共栄の市場観

スタラーはアメリカの小売宝飾店に対してジュエリーを卸供給する大手サプライヤーで、その多くの取引先が天然ダイヤモンドとラボグロウンダイヤモンドの両方を扱っています。クラーク氏は、この状況がダイヤモンド市場全体にとってポジティブに働いていると強調しました。

「これはダイヤモンドのパイを大きくしている」とクラーク氏は述べています。消費者はその時々の人生のステージや予算に応じて、天然かラボグロウンかを柔軟に選ぶようになっており、「ラボグロウン派」や「天然ダイヤ派」として固定されるわけではないといいます。つまり、一人の顧客が生涯のうちに両方を購入するケースも十分にあり得るという視点です。

マイヤーズ氏もこれに同調し、「どちらのカテゴリーも活況を呈しており、少なくとも私たちの視点では、一方が他方を傷つけているとは思わない」と述べています。ラボグロウンの台頭に伴い、一時的な「調整期間」はあったものの、全体的な需要が底上げされているとの見解は、悲観的な見方が多かった業界に一石を投じるものといえます。

「ジャスト・イン・タイム」在庫モデルとサービスの重要性

ポッドキャストでは、スタラーのビジネスモデルについても詳しく語られました。同社が重視するのは「ジャスト・イン・タイム(Just-in-Time)」在庫管理です。これは製造業でも広く知られる概念で、必要なものを必要なときに必要な量だけ供給するという考え方。宝飾業界においては、在庫リスクを最小限に抑えつつ、顧客ニーズに迅速に対応することを可能にします。

また、両氏が強調したのは、単なる「商品提供」から「サービス提供」へのシフトです。現代の宝飾市場では、品質や価格だけでなく、顧客体験や専門的なアドバイス、アフターサービスの充実が競争力の源泉となっています。特に規模の小さなサプライヤーにとって、大手と同等の在庫や価格競争力を持つことは困難であるため、いかに付加価値のあるサービスを提供できるかが生き残りのカギとなると指摘しています。

経営体制の刷新も注目点

スタラーは2025年1月1日付で経営トップが交代しました。創業者のマット・スタラー氏がCEOを退き、取締役会の執行会長に就任。後任CEOにはダニー・クラーク氏が昇格し、マイヤーズ氏も最高執行責任者(COO)から社長へと昇進しています。長年にわたる創業者体制からの移行は、スタラーが新たな成長フェーズへと進もうとしていることを示唆しており、業界内でも注目を集めています。

日本市場への示唆

日本においても、ラボグロウンダイヤモンドの認知度は着実に高まっています。一方で、天然ダイヤモンドへの根強い信頼や希少性への価値観も依然として強く、米国とは異なる消費者心理が存在します。しかしながら、スタラーが示す「どちらも活況」という視点は、日本市場にも応用できる考え方です。天然・ラボグロウンを対立軸で捉えるのではなく、それぞれの価値を訴求しながら顧客層を広げるアプローチは、国内の宝飾店にとっても有効な戦略となり得るでしょう。また、「サービスの充実」という観点は、職人技や丁寧な接客を重んじる日本の宝飾文化とも親和性が高く、小規模な専門店こそが強みを発揮できる領域ともいえます。

まとめ

米国大手宝飾サプライヤー・スタラーのトップ2名が示したのは、天然ダイヤモンドとラボグロウンダイヤモンドが「競合」ではなく「共存共栄」の関係にあるという前向きな市場観です。消費者が自身のライフステージや価値観に応じて柔軟に選択する時代において、業界に求められるのは二項対立の議論ではなく、ダイヤモンドというカテゴリー全体の魅力を高める取り組みではないでしょうか。日本の宝飾業界においても、この「パイを大きくする」という発想は、今後の市場開拓において重要なヒントとなるはずです。